私のこと 奴隷ちゃん
奴隷化されていたとき、彼の前では私は自分のことを密かに『奴隷ちゃん』と呼んでいました。
奴隷化されてからは、彼は私の話すことはいっさい聞いてはくれませんでした。
私の話の内容は、趣味や友人のことなど。
趣味に関しては、彼の母親と同じであるから聞いていて楽しい、と彼にはお付き合いのはじめの頃に言われていました。
でも何年か経ってから、私の話はくだらないと言われました。
会話はまずは私からでした。
いつもそうでした。
私が話し出すと、必ず反射的にスマホを持ち、自分の趣味に関する画像をひたすら眺めていました。
毎回「まただよ……」泣きたい気持ちとショックを隠しつつ、聞いてくれてはいないとわかっていたので簡潔に話をしていました。
時間にして5分以内。
それ以上だとスマホを眺める彼の顔が苦痛で歪んでくるのがわかるほどでした。
「いつまで喋ってんだよ!」と思っていたのでしょう。
私が話し終わって10秒くらいの沈黙。
その後は彼の独演会がはじまります。
「そんなことよりさあ!」のひと言からはじまったこともありました。
私の話が「そんなこと」。
彼は自分の趣味に関わることを喋り続けました。
1時間半から2時間くらい。
よくそんなにペラペラ喋り続けられるなあと不思議で仕方がありませんでした。
話の切れ目がほとんど無いので、私はトイレに行きたくてもタイミングをなかなか掴めませんでした。
私にとっては全く興味が無い、彼の趣味に関する独演会。
しかもあからさまに褒めることを要求している。
褒め要求ポイントがとてもわかりやすかったのです。
当時私はもう彼の趣味に関することで、褒めることはいっさいやめていました。
めんどくさい、そう思うようになっていたからです。
反発心もありました。
私の話をきいてくれないのに、なんで彼の独演会で褒め続けなきゃいけないのよ。
今思えば、奴隷化された時期と褒めるのをやめた時期がほぼ重なっています。
新しい彼女も、今は話を聞いてもらっていても、いずれは独演会の奴隷ちゃんになるのかと思うと気の毒でしかたありません。